記事Article

蒸留所放浪記(第1話)~三和酒類壱號蔵焼酎道場体験(1)~

CRAFT

蒸留所放浪記(第1話)~三和酒類壱號蔵焼酎道場体験(1)~

■プロローグ
 私が学生時代を過ごした高知は、老いも若きも、男も女もお酒が大好きな人が多いお国柄でした。高知のお酒の席が楽しいのは、とにかくラテン的な開放感と自由な雰囲気があること!仲間内でお酒を飲んでいても、時間がたつにつれて徐々に隣にいるグループと仲良くなり、垣根がなくなり、最後にはみんな仲間になって、一緒に飲んで「よさこい節(土佐の 高知の はりまや橋で 坊さん カンザシ 買うを見た よさこい♪ よさこい♪)」を歌っていた・・・なんてことは日常茶飯事でした。とんでもなく自由な高知のお酒。「自由は土佐の山間より」という、自由民権運動の時代の言葉が残っていますが、まさにその風土は現代にまで引き継がれているなと感じたものでした。
 そのような中で、私は仲間とお酒を飲み、語らうことに青春の多くの時間を費やしてきました。そのため、卒業間近になると「私もお酒を造ってみたい!」という思いが強く沸き上がってきたのですが、今思うと自然なことだったのかもしれません。何ひとつあてもなかったのですがお酒を造りたいという「思い」と、酒造メーカーの電話番号の掲載された「お酒の辞典」だけを持って三和酒類を訪問したのは1999年初夏のこと。延々と続く大麦畑の間を歩いて宇佐の事務所を訪問し、入社試験を受けたことが昨日のことのように思い出されます。それから、あっという間の20年。振返るとこの20年間は、ひたすら焼酎に関わる仕事をしてきました。焼酎の製造、研究、商品開発。その間、先輩や上司から、焼酎造りの楽しさ、厳しさ、技術や伝統、そして出来上がった焼酎の飲み方、楽しみ方を徹底的に教えてもらいました。


■蒸留所放浪記スタート
 これから私は、これまでの知識と経験を基に、焼酎の世界を更に深く理解するためにも、日本各地の焼酎の蒸留所やウイスキー、スピリッツの蒸留所、また、世界の蒸留所を巡り、焼酎造りと対比させながら「焼酎」と焼酎を焼酎ならしめる「麹」について思索したいと考えています。
「蒸留所放浪記」第1話は、私達の足元、三和酒類の社内にある「21製造場・壱號蔵焼酎道場」の体験記からスタートします。

 この三和酒類の社内にある焼酎道場は、全従業員が焼酎造りを体験する機会を作り、その体験を共有することを目的として、昨年度より企画がスタートしました。1グループ5〜6人で述べ5日間受講します。私たちのグループは第20期生で、ベテランから中堅社員6人が集まったアダルトなグループとなりました!所属する部署もバラバラ。総務課、製品課、拝田グリーンバイオ事業所、CCRNセンター、商品開発課と、日々の業務の中では、なかなか時間を割いて話しをすることができないメンバーなのですが、今回は本当に貴重で楽しい時間となりました。


■11月5日(月)焼酎道場1日目(仕込み開始)
 初日は、大麦の原料処理から麹菌の種付け、製麹機への盛込みまでを行いました。
最初に、みんなで神棚に安全醸造を願います。祀られている神様は、宇佐神宮の神様。宇佐神宮の式たりにのっとり二礼四拍一礼でお参りします。その後、焼酎造りがスタート。
 

壱號蔵の神棚


 まずは、大麦を洗麦し浸漬(しんせき)させます。浸漬とは、大麦を水につけて吸水させることです。適切な水分量を吸水させることが、良い蒸し、良い麹につながってきます。私たちのグループは、しっかりと洗麦することで、雑味の少ない原酒造りを目指すこととしました。
  水切りをしている間に、麹をつくるための製麹機の準備を行います。今回の仕込み量に合わせて仕切り板を組み立ててゆきます。組み立てながら、麹が雑菌で汚染されないように念入りにエタノールで消毒を行います。
 
 製麹の準備が整ったところで、大麦を蒸して、放冷し、適温になったところで、大麦に「種麹菌」をまきます(種付け)。丸尾場長によると種麹のまき方で、その後の「麹」の出来の良し悪しが決まるとのこと。種麹をまく作業は、今回20期生の紅一点である、近藤さんに行ってもらいました。初めての経験でしたが、丸尾場長の厳しい評価にも合格!!
 

種麹をまく近藤さん


■11月7日(水)焼酎道場2日目(出麹・1次仕込み開始)
 焼酎道場2日目は、下田社長の講話からスタートしました。三和酒類やいいちこの歴史から始まり、酒母や酵母の話しと内容は多岐にわたりました。お菓子とお茶をいただきながらリラックスしたムードの中で、和やかに勉強することができました。
 座学の後は出麹の時間です。みんなで麹の状貌(じょうぼう:麹やもろみの状態のこと)を確認しましたが、とても良く麹ができています。食べてみると、しっかりと酸が出ていて、酸っぱい!出麹酸度の測定を行うと酸度は5.3でした。


麹の状貌を確認


 1次もろみタンクに水と酵母を準備し、麹をかけてゆきます。出麹の担当は、総務の大塚さん。いつも冗談を言って場を和ませてくれまる方なのですが、この時ばかりは真剣そのもの!


出麹の作業をする大塚さん


 そして、2日目最後は、酒税法や記帳に大変詳しい園田さんによる酒税法講座を受講。本格焼酎をはじめ、お酒を製造するためには、国税庁から免許を与えられてはじめて製造することができます。そのため、様々な義務や規則があり、正しく理解して酒類醸造を運営しなければなりません。要点が良くまとめられていて、大変わかりやすく学ぶことができました。ところどころで、眠気覚まし?!のクイズもあり、集中して酒税法を勉強することができました。
 

酒税法の講義をおこなう園田さん


焼酎道場体験記2に続く。

  • 松本 真一郎

    三和酒類株式会社 / 研究所 商品開発課 課長

    1976年生まれ。福岡県北九州市出身。
    高知大学農学部卒業後、2000年に三和酒類株式会社へ入社。
    入社後、製造部、虚空乃蔵、三和研究所、商品開発部での業務に携わる。入社20年目。
    趣味は中学時代から続けている剣道。四段。
    子供は3人。3人とも剣道修行中。親子で剣道に明け暮れる日々を過ごしている。
    ワイン好きで(社)日本ソムリエ協会認定のソムリエの資格を持つ。
    好きなカクテルはTUMUGIベースのドライマティーニ。
    好きな作家は、開高健。
    座右の銘は、開高がこよなく愛した言葉で「悠々として急げ」「漂えど沈まず」