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蒸留所放浪記(第2話)~三和酒類壱號蔵焼酎道場体験(2)~

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蒸留所放浪記(第2話)~三和酒類壱號蔵焼酎道場体験(2)~

■11月11日(月)焼酎道場3日目(2次仕込み開始)

 焼酎道場3日目は、1次仕込み5日目の状貌(じょうぼう:もろみや麹の様子のこと。)確認の後、2次仕込み掛け作業を行います。なお、メンバーは前回に引き続き20期のベテランから中堅で構成された頼りになるみなさん。
 

20期メンバーのみなさん


 1次仕込みでは、もろみの初期の温度コントロールが重要ですが、この画像のように「スターフィン」とよばれる冷却装置をタンクに投入して、発酵時の酵母の発熱による過度な温度上昇を抑えます。このスターフィンの中には、冷却水が流れており星型(スター)のフィンの部分で熱交換を行います。丸尾場長曰く、『みなさんの1次もろみは、1次2日目の温度が上がりすぎて、制御することが大変でした。手のかかる暴れん坊のもろみだったよ!』という、お褒め?お叱り?の言葉を頂きました。
 前回(三和酒類壱號蔵焼酎道場体験1)、出麹した際に、麹がとてもよくできていると感じたのですが、麹の力が強かったことと、出麹後の即時温度(そくじおんど:ある作業を行った直後の温度のこと。)が比較的高かったことが『暴れん坊』の理由だったのではないかと思いました。


  1次5日目のもろみの様子


 もろみタンクの下部には、もろみや仕込み水の出し入れを行うための栓(吞み口:のみくち)がついています。この吞み口を開閉するための道具のことを本機(ほんき)と言います。焼酎道場の先生である瀧上さんに使用方法を学びました。最近の大型の醸造設備を使った仕込みの場面では、使う機会が減ってきているために貴重な体験です。


  本機の使い方を教わります


 仕込みタンクの準備ができたところで、2次仕込みを開始。一般的に麦焼酎の2次仕込み量は、1次仕込みで使用する2倍量の大麦を使います。今回の仕込みでは、1次仕込み50㎏の大麦麹に対して、2次仕込み100㎏の大麦を掛けました。蒸し時間は50分間。蒸し器に蒸気を吹き込むと、ホロの上に水蒸気がたち登り、蔵中に蒸した大麦の香りが漂ってきます。
 蒸し上がりまでの時間は、蒸気の加減を調整しながら待つのですが、みんなで雑談をしながら過ごしまた。日々の忙しい業務の中では、ゆっくりと話をすることのできないメンバーとこのような時間がとれたことも貴重なことだと感じました。


  大麦が蒸しあがるまで雑談


 蒸し上がった後は、蒸し器から大麦を掘り出し、放冷機へと移します。熱々の蒸し麦を23℃にまで放冷機で冷やします。放冷機から大麦を移す役目は、今回のメンバーの中で最も若手の製品課の亀井さん。力強く100㎏の大麦を放冷機に移してゆきます。放冷機に移した後は、ファンで冷風をあて、全員手作業で大麦の塊を崩しながら冷やします。


 蒸した大麦を放冷


 放冷機で適温の23℃にまで冷やした大麦を2次もろみへと投入します。ここからが、2次仕込みのスタート。
スタート直後のもろみの液面は画像のような状態となっています。ここから約10日間じっくりと発酵をさせることで旨い焼酎を造ります。今回使用した酵母は、いいちこ酵母。三和酒類にとって生命線ともいえるこの酵母は、高いアルコール収量を期待できるとともに、いいちこの香味になくてはならないブレンドの柱となる原酒を造る酵母です。私たちグループが目指している酒質は、しっかりとした味わいがありつつも、雑味や苦みの抑えられたバランスの良い常圧蒸留原酒です。イメージした通りの旨い焼酎ができますように!


  2次仕込み作業完了


 2次もろみ3日目になると随分と発酵がすすみます。櫂入れ(かいいれ)を行うと液面に酵母が出した二酸化炭素の泡がたってきます。香りは酵母の発酵による華やかな香り、やや油っぽい香りや硫黄の香り、穀物の香りが入り混じって感じられます。もろみの中では、2次1日目に掛けた大麦のデンプンが、麹の酵素であるα-アミラーゼ、グルコアミラーゼによって、グルコースにまで糖化されます。このグルコースを栄養源として、いいちこ酵母がアルコール発酵を盛んに行ってゆきます。このように糖化と発酵を同時にバランスよく行う発酵方法は「並行複発酵(へいこうふくはっこう)」と呼ばれており、麹の酒(清酒や焼酎)の製法の特徴のひとつです。


     2次3日目のもろみの様子


焼酎道場体験記3に続く。

  • 松本 真一郎

    三和酒類株式会社 / 商品開発部 商品開発課 チーフ

    1976年生まれ。福岡県北九州市出身。
    高知大学農学部卒業後、2000年に三和酒類株式会社へ入社。
    入社後、製造部、虚空乃蔵、三和研究所、商品開発部での業務に携わる。入社20年目。
    趣味は中学時代から続けている剣道。四段。
    子供は3人。3人とも剣道修行中。親子で剣道に明け暮れる日々を過ごしている。
    ワイン好きで(社)日本ソムリエ協会認定のソムリエの資格を持つ。
    好きなカクテルはTUMUGIベースのドライマティーニ。
    好きな作家は、開高健。
    座右の銘は、開高がこよなく愛した言葉で「悠々として急げ」「漂えど沈まず」