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蒸留所放浪記(第5話)~三和酒類壱號蔵焼酎道場体験(3)~

CRAFT CULTURE

蒸留所放浪記(第5話)~三和酒類壱號蔵焼酎道場体験(3)~

■11月21日(木) 焼酎道場4日目(蒸留)

 さて、焼酎道場4日目はいよいよ蒸留。2次仕込みを始めて11日目。この間、焼酎道場の先生達にもろみを大切に管理してもらいながら、元気に「いいちこ酵母」は発酵を続けてきました。
 蒸留前もろみのアルコール度数を計ると値は17.8%。ここ最近、外気温が下がって寒くなってきたために、半月ほど前のもろみのアルコール度数に比べて0.5%ほど値が下がっていますが、問題なく健全な発酵ができたことが確認できます。

 
蒸留直前のもろみの様子

 これで、もろみの発酵は終了し、いよいよ製造のクライマックスに近づいてきます。蒸留です。私はこれまで様々な国内外の蒸留所を訪問してきました。未来の「麹の蒸留酒」のヒントを探して蒸留所を「放浪」し続けているのですが、世界中にある蒸留所の最大の見所は、当然ですが「蒸留」と「蒸留機」です。
 余談ですが、本格焼酎の製造を「起承転結」で表現するならば、「起」は原料であり農学の物語、「承」は麹・酵母の微生物学・発酵学の物語、次にくるドラマティックな「転」が蒸留であり、化学工学の分野へと一気に物語が展開します。今、私たちの目に見えて認知している工程であるためつい見過ごしてしまうのですが、それは誰も思いもよらないような劇的な製造手法であり、かつ劇的な酒質変化を遂げる工程です。まさに、自然の生物の営みと人間の発明した技術が強く融合する瞬間のように感じられます。長い年月をかけて、先人達がこのような製造手法を編み出したことに、私は感動を覚えます。ちなみに「結」は・・・貯蔵・ブレンドであり化学と芸術を合わせた物語だと考えています。
 さらに、世界中の蒸留機にはそれぞれ工学的な合理性がありつつも、個性的なデザインがあり、フォルムがあります。人々を魅了する視覚的な美しさ。圧倒的な存在感と迫力。そして強い自己主張。各蒸留所の蒸留機は、ほとんどが一点もののオリジナルの設計なのですが、それぞれの美しさと存在感が故に蒸留機そのものが蒸留所のシンボルとなっているのです。

 蒸留の基本的な考え方として、アルコール(エタノール)と水、その他様々な有機物の混合物である「もろみ」を加熱し、水(沸点:100℃)よりも沸点の低いエタノール(沸点:約78℃)が先に揮発する現象を利用し、蒸留初期に溜出する高いアルコール度数の原酒を得ることを目的とした工程です。なお、世界のお酒を2つに大別する場合「蒸留したか、蒸留していないか」で表現されることが多々あります。蒸留した酒のことは「蒸留酒」、蒸留せずに発酵と、ろ過工程のみ行った酒のことは「醸造酒」と呼ばれています。代表的な世界の蒸留酒としては、ウイスキー、ブランデー、ウォッカ、ジン、白酎、焼酎など。一方の醸造酒として、ビール、ワイン、清酒などがあります。もっと語りたいのですが、蒸留を語るだけで、何十ページも必要としますので、この話しもまた、おいおい・・・。
 移送ポンプを使って2次もろみを壱号蔵蒸留機へ勢いよく送ります。
 

もろみを蒸留機の中に張り込みます

~三和酒類壱號蔵焼酎道場体験(4)~へ続く

  • 松本 真一郎

    三和酒類株式会社 / 研究所 商品開発課 課長

    1976年生まれ。福岡県北九州市出身。
    高知大学農学部卒業後、2000年に三和酒類株式会社へ入社。
    入社後、製造部、虚空乃蔵、三和研究所、商品開発部での業務に携わる。入社20年目。
    趣味は中学時代から続けている剣道。四段。
    子供は3人。3人とも剣道修行中。親子で剣道に明け暮れる日々を過ごしている。
    ワイン好きで(社)日本ソムリエ協会認定のソムリエの資格を持つ。
    好きなカクテルはTUMUGIベースのドライマティーニ。
    好きな作家は、開高健。
    座右の銘は、開高がこよなく愛した言葉で「悠々として急げ」「漂えど沈まず」