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蒸留所放浪記(第6話)~三和酒類壱號蔵焼酎道場体験(4)~

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蒸留所放浪記(第6話)~三和酒類壱號蔵焼酎道場体験(4)~

■引き続き蒸留のお話し

 麹の蒸留酒である本格焼酎の蒸留方法には、大きく分けて2通りあります。1つが常圧蒸留です。これは、大気圧化(常圧化)で蒸留する伝統的な手法で、原料の特徴を感じやすく、香味が濃厚な原酒を造ることができます。もう1つが減圧蒸留です。こちらは、真空ポンプを利用して蒸留機内を減圧状態とし、もろみ中の成分の沸点を下げることで、華やかでライトな原酒を造ることができる比較的近代的な蒸留技術です。例えるならば、平地でお湯を沸かすと100℃で沸騰しますが、高い山の山頂では気圧が低いために100℃よりも低い温度でお湯が沸きます。この原理を利用して、蒸留機内の圧力を下げて低い温度で蒸留する方法が減圧蒸留法です。なお今回は、伝統的な手法の常圧蒸留を行っています。
 2次もろみを送り終わったら、蒸留機を密閉状態にして蒸気を吹き込み加熱します。加熱する蒸気のタイプにも2通りあり、1つが直接蒸気加熱で生蒸気をもろみ中に吹き込む方法です。もう1つが間接蒸気加熱でもろみと非接触の空間に蒸気を通し、間接的にもろみを加熱する方法です。蒸留機底部にジャケットが設置されており、そこに蒸気を通して間接的に加熱させています。
 直接加熱は、蒸気を吹き込み続けるために蒸気ドレン(=水蒸気から液体である水に変化したもの)によって時間が経つにつれてもろみの濃度が薄くなります。粘度の高いもろみに適した加熱方法であるといわれています。一方、間接加熱は蒸気ドレンによるもろみの希釈がないため、揮発しない成分が濃縮されてゆきます。できあがる原酒は、香味が濃くなる傾向があります。今回は、直接蒸気・間接蒸気を併用しながら蒸留を行いました。


壱號蔵の常圧蒸留機

 また、原酒(アルコール)の回収方法も酒質を決定するのに重要な要素となります。原酒は出てくる順番に、初留(=最初に出てくる原酒のこと)から、中留、後留とよばれていますが、それぞれの部分をどれくらい回収するのか次第で香味が変わってきます。
 私たちのチームではメンバーで打合せ、最後に出てくる後留とよばれる原酒を早めにカット(=原酒として回収しない操作)して、雑味の少ない酒質を目指すこととしました。後留には「末だれ臭」と呼ばれる、バランスの悪い独特の臭いが出てくるためです。

 もろみを加熱すると、水よりも先にエタノール(アルコール)が揮発してゆきます。エタノールを気体とするだけでは、お酒として回収することができません。そこで、コンデンサーとよばれる冷却装置を使って、気体となったエタノールを冷やし、液体に戻す操作を行います。その冷却コンデンサーを上から見たところです。蛇管(=ジャカン。蛇のような形をした管だからこのように呼ばれているようです。)の中を気体となったエタノールが通過します。蛇管のまわりは冷却水で満たされており、ここで熱交換が行われ、冷やされたエタノールが気体から液体へと状態変化します。

 
蒸留機の冷却コンデンサー

 蒸留開始から30分程度で、初留が出始めました。この時の温度や時間をチェックして記録します。初留はアルコール度数が60%を超えるような高度数のものが出てきます。香りは、アルコールの強い香りとともに、華やかな香り、穀物様の香りが感じられます。時間が経つにつれて、アルコール度数が下がってきて、香りも穀物様の香りとともに、油様の香りや硫黄の香りが強くなってきます。

 
メートルボックス(=原酒の状態を確認するガラス製の部分)内に初留が出たところ

 蒸留を開始してからおおよそ3時間ほどで蒸留が終わりました。蒸留したばかりの原酒の香味は、とても荒々しく、油様の香味もあり、個性的です。個人的には癖になりそうな個性のある酒質なのですが、このままでは多くの人には受け入れられないので、ここから更に味を整えるための作業を続けてゆくこととなります。


~三和酒類壱號蔵焼酎道場体験(5)~へ続く

  • 松本 真一郎

    三和酒類株式会社 / 商品開発部 商品開発課 チーフ

    1976年生まれ。福岡県北九州市出身。
    高知大学農学部卒業後、2000年に三和酒類株式会社へ入社。
    入社後、製造部、虚空乃蔵、三和研究所、商品開発部での業務に携わる。入社20年目。
    趣味は中学時代から続けている剣道。四段。
    子供は3人。3人とも剣道修行中。親子で剣道に明け暮れる日々を過ごしている。
    ワイン好きで(社)日本ソムリエ協会認定のソムリエの資格を持つ。
    好きなカクテルはTUMUGIベースのドライマティーニ。
    好きな作家は、開高健。
    座右の銘は、開高がこよなく愛した言葉で「悠々として急げ」「漂えど沈まず」