記事Article

「J.S.A. SAKE DIPLOMA取得で学んだこと」

CULTURE REGIONAL

「J.S.A. SAKE DIPLOMA取得で学んだこと」

■お酒との出会い
 私と日本酒との出会いは大学生の頃でした。
 実は元々日本酒に対しあまりいいイメージを持っておらず、縁遠いものと思っていました。そのイメージを180度変えてくれたのは、学生時代にアルバイトをしていた京料理店のオーナーからの一言。「コレ、うまいで。飲んでみ。」その時飲ませていただいた山形県の「出羽桜 桜花吟醸酒」はフルーティでお米のピュアな旨味が感じられ、今までイメージしていた日本酒と全く異なるものでした。それをきっかけに酒屋巡りを始めて、美味しい日本酒を探したり、蔵の方と話をしたりとお酒の世界にどっぷりとハマっていきました。
 就職も酒類関連会社を希望し、地元の三和酒類で働くことに。焼酎はもちろん、日本酒やワインも製造している会社と知っていたので、いずれ日本酒に関わる仕事も出来るのではないかと期待していました。

■「お酒を売る」ということ
 入社後3年間は焼酎製造に携わりました。振り返ると、入社してすぐにお酒の製造現場で働くことが出来たのはラッキーだったと思います。
 入社3年目の冬、日本酒造り最盛期のこと。冬場の仕込み応援で、虚空乃蔵(三和酒類の日本酒製造場)で日本酒の造りに関わる機会が訪れました。念願の日本酒製造の現場です。日本酒造りをする中で、蔵人たちの日本酒に対する想いや造りに対する真摯な姿勢に触れて「この酒を売りたい、この酒をもっと広めたい」という気持ちが改めて湧いてきました。


【酒米雄町の田植え中】

 そして4年目の春、異動で営業部に。地元大分県の担当となりました。日本酒専門店の店主や日本酒オピニオンリーダーが集まる飲食店のオーナーに対し、営業をしていく中で気づいたことは「和香牡丹というブランドを売るには自分自身がブランド人になる必要がある」ということでした。日本酒に対し確かな知識を持ち、自分自身をブランド化することで、蔵や日本酒の魅力を最大限お伝えすることができるのではないか、そのためにももっと勉強をしなければならないと思いました。そんな折、㈳日本ソムリエ協会が「J.S.A. SAKE DIPLOMA(酒ディプロマ)」(※以下、酒ディプロマと表記)という認定制度を発足したのです。

■「酒ディプロマ」という認定制度
 「酒ディプロマ」とは2017年にソムリエとして有名な田崎真也氏が会長を務める日本ソムリエ協会が発足した日本酒に特化した認定制度です。
 これまでの日本酒の評価は、製造技術を研鑽することが目的の「減点法」でした。一方、日本ソムリエ協会の「酒ディプロマ」ではワインのテイスティング同様にお客様視点の「加点法」で評価をします。例えばある日本酒の香りを評価する場合、「弱い」というネガティブな表現をせず、同様の香りを「おだやか、優しい、心地いい」などというポジティブに表現をして、個性として捉えるアプローチを選択します。また、香りの成分を「酢酸イソアミル」や「カプロン酸エチル」などの化学用語を使用せず、前者を「バナナやメロン」、後者を「リンゴ」の香りのように身近なものに例えます。更に、日本酒と料理とのペアリングも考慮します。
 このような表現方法や考え方は、日本酒に馴染みのないお客様にも分かり易く説明出来るため、より多くの方に日本酒の魅力をお伝えできると思いました。そして「酒ディプロマ」の認定を受けるべく勉強を始めました。

■勉強と試験
 勉強をすると言っても、2017年に発足して2017年の第一回の試験を受けるのですから、過去問がありません。テキストは日本ソムリエ協会が発行した教本一冊のみです。しかし、その内容は充実しており、日本酒の歴史・製造工程はもちろん、サービス(温度・器について)や焼酎についての章もありました。計208ページの分厚い内容、学生時代より一生懸命勉強したかもしれません。


 
【テキスト(左)と内容(右)。テキストの端には、びっしりと書き込みが】

 試験勉強で特に苦労したのは、料理とのペアリングです。教本には和食以外にもフランス料理や、イタリア料理、中華料理やスペイン料理まで載っているのです。聞いたこともない、食べたこともない料理とのペアリングを一体どうやって考えれば良いのか。実際に洋食店で働く友人に料理について色々教えてもらったりしました。
 2017年4月から勉強を始めて4か月。ついに試験の始まりです。8月の一次試験(マークシート※2017年当時)を突破、9月の二次試験(テイスティングと論述試験)を終えて、待つこと1か月。10月に無事合格の知らせを受けました。
 第一回の受験者数は3,513名。受験者はワイン・ソムリエの資格を持つ日本ソムリエ協会の会員が半数を占め、他は、酒造メーカーや販売・飲食店などのサービス業、日本酒愛好家など、さまざまな職種の方が挑戦されたようです。

■認定取得後と今後
 認定資格を得てからは、酒販店の店主や飲食店のオーナーに対して日本酒「和香牡丹」を今まで以上に高いレベルで、お客様に対しては日本酒を愉しむシーンに合わせたご提案が出来るようになりました。お酒の特徴だけを伝えるよりも共感を頂けているような気がします。
 前述のように既にお酒に関わる仕事をしている方や興味のあるお客様への提案はもちろんのこと、今後はこれまで日本酒に触れる機会がなかった方々にも愉しんで頂けるような活動が出来たらと思っています。日本酒業界全体の課題でもありますが、まだまだ日本酒って堅苦しい、なんだか難しそう、一部のマニアのものと思っている方も多いのではないでしょうか。
 しかしながら、日本酒を造る際に使用する「麹」は、普段、皆さんが食べている味噌や醤油にも使われています。日本酒の原料である「お米」は言わずもがな日本人の主食です。我々の食生活と密接に関係しており、まさに日本の食文化そのものだと思います。
 そして2020年は東京オリンピック・パラリンピックが開催され、世界中の多くの方々が日本を訪れます。我々がフランスと聞いてフランス料理やワインをイメージするように日本での食事やお酒を楽しみにしている外国の方も多いと思います。その際に日本の人が日本の麹文化(和食、調味料、発酵、日本酒、焼酎…)について魅力を伝えることができれば本当にかっこいいと思います。


【虚空乃蔵メンバー(左)と飲食店オーナー様(中央)と一緒に】

■最後に
 よきお酒との出会いは私の人生において大きな影響を与えた出来事と言えます。お酒がなくとも人は生きていけます。決して生活必需品ではないのですが、人生の様々な場面に「彩り」を与えるようなものじゃないか、そんな風に感じております。AI・テクノロジーが飛躍的に進化し、世の中はどんどん合理化されていきます。その世の中だからこそ「愉しみ」「彩り」「文化」といった価値観は稀少で意味が大きくなっていくような気がしております。そんな価値観を大切にこれからも大いに楽しんで熱中、熱狂できる仕事をしていきたいと思います。

  • 桃田 貴光

    三和酒類株式会社 / 営業部 営業課

    1986年、大分県宇佐市生まれ。立命館大学文学部卒業後、2010年三和酒類に入社。
    入社後は焼酎・日本酒製造部門を経て日本酒「和香牡丹」の営業を担当。
    2017年J.S.A. SAKE DIPLOMA取得。
    趣味はフットサル、魚釣り、料理、読書。