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「チャレンジする蔵」虚空乃蔵での日本酒造り -後編-

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「チャレンジする蔵」虚空乃蔵での日本酒造り -後編-

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■最近の麹造りのトレンドと展望
 日本酒の麹造りのイメージには、麹の様子を見たり手入れをしたりするために、暑い麹室の中へ何度も出入りするストイックな仕事、また熟練した杜氏の技を習得しなければ良い麹は造れないのではないか、といったイメージを持たれている方もいるのではないでしょうか。
 実は、醸造設備は年々高度化され、わざわざ麹室に様子を見に行かなくても「自宅からスマートフォンで麹の温度を見られる温度計」や「送風を自動制御して無人で温度操作を行うことができる装置」などが登場し、多くの酒蔵がそれらを導入しています。
 また、杜氏であろうと、1年目の若手社員であろうと、「誰が造っても同じ品質の麹」が造ることができるように、という取り組みが盛んにおこなわれています。虚空乃蔵でもこの取り組みの一環として、「プラスティックケースを使った製麹法」を2年前より一部採用しています。麹造りのポイントである麹水分を、製麹スタート時に必要最低限の状態にしておき、温度がしっかり上昇するまでの間は密閉されたケースの中で水分が逃げないようにすることで、誰が麹を造っても毎回同じ品質になるように工夫された技術です。一般的に、木製の器具は雑菌が住み着きやすく、十分な洗浄やメンテナンスが必要とされます。衛生面でも非常に優れているこのような革新的な製法を積極的に取り入れていくことも今後大いに検討していきたいと思います。
 


【麹室での作業】

■「チャレンジする蔵」としての将来展望
 仕込みに際しては、外部で得た情報を蔵人と共有して、伝統的な製法を残しつつも新たに活かせる技術を抽出し、現場に反映させています。良かった点、悪かった点を仕込み終了後に振り返り、来期の仕込みに活かすという流れを繰り返し、お客様に「チャレンジする蔵」として認識してもらえるように日々努力しています。
 お客様との接点という面においては、昨今の新型コロナウイルスの影響で試飲会や日本酒コンテストなどの行事が中止になり、こうした蔵の活動を情報発信し難い状況が続いています。しかし、先日は大分市の丸田酒舗様、インスタグラムで活動される「#愛酒クリームクラブ」の皆様とのコラボイベントとして、オンライン蔵見学を実施しました。麹室の中での臨場感のある説明や、お客様との質問コーナーの場面では大いに盛り上がり、新たな情報発信のスタイルや多種多様な形でコミュニケーションをはかる手段を取り入れる必要性を大いに感じました。
 


【オンライン蔵見学:70名を超えるファンが参加】

 弊社が位置する宇佐市は大分随一の穀倉地帯。大分県民にとっては食米としておなじみの「ヒノヒカリ」や地元契約栽培の酒米「雄町」を使用し、地下深くから汲み上げた水で醸すという、地域資源を活用した日本酒造りはここでしか得られないものです。そして、大分の食に寄り添い、引き立てる日本酒を目指しています。
 虚空乃蔵で造る日本酒に然り、お客様とのコミュニケーション手段に然り、その時代に合わせる広い視野を持ちながら、探求心とお客様の「おいしい、楽しい」を追求した活動に今後も挑戦していきたいと思います。

  • 佐藤 貴裕

    三和酒類株式会社 / 虚空乃蔵 醸造責任者

    1986年生まれ。大分市出身。
    北九州市立大学大学院国際環境工学研究科修了後、2011年三和酒類に入社。
    焼酎製造を経験後、2015年より日本酒蔵である「虚空乃蔵」で日本酒製造に従事する。
    2017年J.S.A.SAKEDIPLOMA取得、2019年清酒専門評価者第120号に認定。
    おししい酒を健康的に飲むために、早朝ランニングが日課。
    趣味のフルマラソンはこれまで20回以上完走。