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ピンチをチャンスに。コロナ禍だから出来たオンライン蔵見学

CULTURE

ピンチをチャンスに。コロナ禍だから出来たオンライン蔵見学

■最高金賞受賞の知らせ
 日本酒の仕込み真っ只中の2020年2月末、虚空乃蔵に嬉しいニュースが舞い込んできました。
《「和香牡丹純米吟醸ヒノヒカリ50」が「ワイングラスでおいしい日本酒アワード2020」最高金賞を受賞!》
 2020年度は全国259の蔵元から897点のエントリーがあり、最高金賞の受賞率は約2.7%でした。通常、日本酒のコンペティションでは「山田錦」「五百万石」などに代表される酒米が有利とされています。しかし今回、地元大分宇佐産の飯米「ヒノヒカリ」を使用して最高金賞を受賞することが出来ました。「地元の米・水で仕込んだお酒が認められた」、そのことがなによりも嬉しかったです。
 普段から虚空乃蔵を応援して頂いている酒屋、飲食店の皆様にそのニュースをお伝えすると、自分のことのように喜んでくださいました。4月28日には六本木ヒルズでの表彰式も予定されており、式典はもちろんですが、他の蔵の方々と情報交換が出来るのを楽しみにしていました。


■猛威を振るう新型コロナウイルス
 3月に入ると情勢は急激に悪化。11日にWHOが新型コロナウイルスをパンデミックと認定。その後、東京オリンピックの延期も決まりました。そして感染拡大が続くなかで日本政府は4月16日、「緊急事態宣言」を全都道府県に拡大しました。数々のイベントが中止や延期に追い込まれる中、ついにというか、覚悟はしていましたが楽しみにしていた「ワイングラスでおいしい日本酒アワード2020」の表彰式も中止の連絡が入りました。残念でしたが、それ以上に世の中一体どうなってしまうのか、大きな不安がよぎりました。


■デジタルで繋がる出会い
 他者との接触を極力控えなければならないという制約の中、世間ではテレワークの導入が急速に拡がりました。当社でもテレワークが始まり、生活スタイルが大きく変わり始めたことを実感しました。これまでは得意先を訪問することで商品案内や情報収集をしてきましたが、新型コロナウイルスの感染拡大の状況を鑑みると、顔を合わせての活動は当面無理だろうなと思いました。

――コロナ禍において私に出来ることは何だろう?このピンチをチャンスに変える方法はないだろうか?

 そんなことばかり考えていました。テレワーク期間中はSNSを活用して顧客接点をデジタルで繋ぎました。地元の飲食店からテイクアウト情報を集め、その情報をオリジナルのタグを付けてインスタグラムで発信。自宅待機で SNSを使用する機会が多いこともあってか、多くの方々が情報を拡散して応援して下さり、テイクアウトは盛り上がりました。SNSの強みは個人の小さな力が繋がりで拡散することで大きな力になることですが、それを実感する出来事でした。
 
 すっかり私の営業ツールとなったインスタグラムですが、それをきっかけにある方たちと知り合いました。日本酒コミュニティ「#愛酒クリーム」の方々です。彼らはインスタグラムを中心に情報発信をする「日本酒好きインスタグラマー」の集まりで、日本酒シーンを盛り上げるために定期的にイベントを開催されています。そんな彼らとオンライン飲みをする機会がありました。
 同じ日本酒好き同士、日本酒について、彼らの活動ついてなど色々と話が盛り上がり、最終的に「日本酒で地方を元気にできないか」という話題になりました。これがオンライン蔵見学企画『愛酒クリーム47都道府県日本酒の輪を巡る旅』の始まりです。


【オンライン蔵見学のイメージを膨らませる、桃田さん(右)と佐藤さん(左)】


■目標100セット!タイムリミットはたったの2週間!
 私自身オンラインの蔵見学は初めての試みでした。「#愛酒クリーム」のメンバーと私、そして以前から和香牡丹を応援して頂いている大分市の地酒専門店丸田酒舗様にも協力をお願いしました。オンライン蔵見学実施までの流れは以下のようになります。

【参加条件】
・今回のアワードで最高金賞を受賞した「和香牡丹純米吟醸ヒノヒカリ50」720mlと金賞を受賞した「和香牡丹純米吟醸山田錦50」720mlの2本セットを購入

【当日のコンテンツ】
・購入者にZOOMの招待コードを配布
・実施当日の19時に参加者全員、オンラインで乾杯!
・参加者全員で和香牡丹をインスタグラムにアップしてインスタジャック!
・和香牡丹を飲みながらオンライン蔵見学&交流会

 皆様が参加して楽しめる内容を意識しました。オンライン蔵見学までに与えられた時間は2週間、用意した日本酒は100セット。全国47都道府県のトップバッターという大役を任されたので失敗するわけにはいきません。非常に高いハードルですが、イベントを大成功させてコロナで沈んでいる酒類業界に明るい話題をお届けしたい、そんな思いで2週間奮闘しました。

 イベント情報の拡散、商品の準備、地元新聞社の取材、オンライン蔵見学の準備と大忙しの毎日でした。毎日の注文数を確認するのも日課となりました。最初は順調に注文が増えていたのですが、だんだん落ち着き始め、少し焦りを感じていたときのことです。驚くことに注文して頂いた皆様からイベントの呼びかけが始まったのです。みんなでオンライン蔵見学を盛り上げていこうという強い一体感を感じました。応援の輪はどんどん大きくなり、最終的にはなんと目標を超える115セットの販売を達成することができました。本当にありがたくて、より一層皆様に楽しんでいただけるイベントにしなくてはという想いが強くなりました。

 
【桃田さん(左)、#愛酒クリーム 三浦すみれさん(中央)、丸田酒舗 丸田晋也さん(右)】

2020年5月20日 大分合同新聞 11ページより


■オンライン蔵見学とコミュニティの力
 5月30日の19時、いよいよオンライン蔵見学のスタートです。70名を超える参加者とオンラインで繋がり、一斉に乾杯をすることができました。初めての試みだったオンライン蔵見学でしたが、丸田酒舗様のスムーズな進行のおかげで大盛り上がりとなりました。
 翌日、参加者の皆様のインスタグラムでも「楽しかった!」「初めて蔵の中を見て感動した!」「和香牡丹、美味しかった!」などのコメントを頂きました。『愛酒クリーム47都道府県日本酒の輪を巡る旅』第1弾、大分県「和香牡丹」は最高の形でイベントを終えることができました。


【オンライン蔵見学の様子。70名を超える参加者と乾杯!】

 今回オンライン蔵見学で、改めてコミュニティの重要性を感じました。各個人が共通の価値観やライフスタイルで結びついたコミュニティなので「みんなで一緒に何か楽しいことしよう!」となったときの結束力はとんでもないエネルギーや行動力を生み出します。モノや情報が稀少だった時代では、企業がクオリティの高い商品を、マス広告を通じて発信し、それを個人が受け取る時代でした。SNSの時代では個人がマスに匹敵する強力な発信者となり得ます。モノや情報で溢れている成熟社会では価値観の共通する個人やコミュニティと共にブランドを作り上げていくことが重要だと感じています。今回のように皆様が参加できる「余白」をうまくデザインすることが成熟社会における商品のクオリティの一つと言えるのではないでしょうか。今後も和香牡丹は豊かなコミュニケーションをつくる日本酒として皆様と共に日本の麹文化を発信していきたいと思います。

■おまけ
 中止の連絡があった表彰式ですが、6月19日に規模を縮小して無事に開催されました。来年も最高金賞をとって、今度こそ表彰式に参加します!


  • 桃田 貴光

    三和酒類株式会社 / 営業本部付 焼酎事業・清酒事業担当 チームリーダー

    1986年、大分県宇佐市生まれ。立命館大学文学部卒業後、2010年三和酒類に入社。
    入社後は焼酎・日本酒製造部門を経て日本酒「和香牡丹」の営業を担当。
    2017年J.S.A. SAKE DIPLOMA取得。
    趣味はフットサル、魚釣り、料理、読書。