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新米女性蔵人の奮闘日記

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新米女性蔵人の奮闘日記

 皆さん、こんにちは。こうじらぼです。”酒造り”はまだ「男性の仕事」というイメージが強いかもしれませんが、J.S.A SAKE DIPLOMAの教本によると、「古代、祭りの度に酒を造るのは女性の役割であった」とされています。近年、日本酒造りでは女性杜氏の活躍も取り上げられていますが、焼酎製造の現場でも活躍している女性がいらっしゃいます。そこで今回のKOJI-bitoインタビューは三和酒類で焼酎製造に携わって一年、女性蔵人の酒迎(しゅげい)さんにお話を伺いました。酒迎さん、宜しくお願いします。

酒迎 よろしくお願いします!

■名前の由来

―― 色々と仕事の話を伺う前に…、どうしても聞きたいことがあります。読者の皆さんもきっと気になっていると思うのですが、その「酒迎(しゅげい)」という苗字についての由来を教えて頂けないでしょうか。その苗字には、お酒にまつわるエピソードがあるのではないでしょうか。

 気になりますよね。私も調べたことがあります。あるサイトの酒迎という苗字の頁に『大分県では宇佐市南宇佐の宇佐神宮から分祀(ぶんし)した神を酒盛りして迎えて称したと伝える。』と記載がありました。きっとご先祖様が宇佐神宮から分祀した神様を「酒」で「迎」える役割を担っていて、そのことがこの苗字の由来ではないかと思っています。もちろん想像ですけど(笑)。「もしかしたら遠いご先祖様もお酒を造っていたのかもしれない」と考えると、酒造会社に入社して”酒造り”をしていることにも運命を感じてしまいます。

―― 「神様をお酒で迎える」という神事の一部がそのまま苗字になるという考察が面白いです。時を経てご先祖様と同じ役割(仕事)を引き継いでいるかもしれないというエピソードはまるで小説のようですね。
 


【宇佐神宮に奉納された日本酒(上段)と焼酎(下段)】

■”酒造り”の楽しさを知ってしまった

―― どのようなきっかけで焼酎製造に携わるようになったのですか?最初から”酒造り”を希望していたのでしょうか。

 最初から希望していたわけではありません。入社して2年間は製品課でボトリングの工程を担当していました。2年目の冬に製造研修に参加する機会を頂き、一か月ほど現場で勉強をすることになりました。焼酎の造り方に関しては座学では学びましたが、実際に現場に出ると知らないことだらけでした。4日間ずつ全工程を経験させて頂き、あっという間に一か月が過ぎて研修が終了。とても楽しい経験でしたが「一か月じゃ物足りない!もっともっと知識を深めたい!」と思うようになりました。私、知識が増えると思うとワクワクするんです。

 そして昨年の夏、製造課に異動となりました。本社には3つの焼酎製造場があるのですが、各製造場に一人ずつ女性が配属されました。私は第三製造場(全麹仕込み蔵)に配属され、1年目は蒸麦を行う原料処理工程を習得し、2年目の今年は麹を造る製麹工程の習得に励んでいます。

―― 配属前に焼酎製造の経験をされたのですね。研修と実際の仕事は違うところも多いと思います。苦労したことなどありますか?

 今振り返ると研修中は先輩方の多大なサポートがあったので、かなり楽をさせて頂いたのだと思います。実際に担当を持って一人で作業をすると、体力・筋力の無さを痛感しました。製造課の現場は垂直の移動が多いため、荷物を持っての階段の上り下りがとてもキツかったですし、櫂入れ(※1)、差し酛(※2)などの作業も自分の力で何とかしようと思ってもどうにもならず、結局先輩方に頼ってしまうこともありました。しかし、作業を繰り返す中で、荷物の持ち方や力の入れ具合などを工夫することである程度解決することが出来ました。もちろん体力・筋力もついたこともありますけど(笑)。

 製造場内の雰囲気も良く、知識も経験も豊富な先輩方ばかりなので本当に勉強になります。しかし、自分が未熟なため、ミーティング等で意見が言えないのがとても悔しいです。今担当している製麹の作業もとても奥が深いので、早く作業を覚えて、より良い麹が出来るように工夫を重ねていきたいです。

※1 櫂入れ:醪(もろみ)を均一にするために「櫂棒」という道具を使用してかき混ぜる作業。
※2 差し酛:一般的に一次醪の3~5日目のもの(酵母が十分増殖し、かつ元気がよい)の一部を、純粋培養酵母を加える代わりに新規に仕込んだ別のタンクに移し替える作業。
 


【麹をチェックする製造場3人娘 ※研修中】

■新米蔵人たちの”気づき”

―― 1年間、酒蔵の中で働いてみて気づいたことや感じたことはありますか?

 「作業場全体が男性用になっている」と感じました。例えば作業台を運ぶ時、体力のある男性は持ち上げたり引き摺ったりすれば運べます(写真左)が、女性ではそうはいきません。そこで上司に相談して作業台にキャスターを取り付けました(写真右)。これなら体力は関係ないし、持ち上げた台を落として怪我をすることもありません。こんな感じで「力があれば何とかなる」という作業がまだあるので、色々と改善して、次にまた女性が入ってきてもスムーズに仕事が出来る環境をつくりたいと思います。
 


【キャスターを取り付けたことで作業が安全で楽になりました】


 あとこれは他の製造場の女性蔵人の話ですが、場内の清掃がすごいんです。”酒造り”の現場では雑菌汚染を防ぐために清掃は非常に大事な作業ですが、慣れてしまうとどうしても目が行き届かない箇所が出てきます。そういう箇所をどんどん見つけては綺麗にしているそうです。「女性だから気が付く」というわけではないかもしれませんが、細かいところまで目が行き届くのは男性よりも女性の方が多いかもしれませんね(笑)。

―― これは酒蔵に限らず、他の男性だけ・女性だけの職場においても参考になる事例ですね。目線を変えれば気づくことってたくさんあると思います。おしまいに今後について、目標や夢があれば教えてください。

 友達と一緒にお酒を飲みにいくことがあるのですが、焼酎を注文する友達は多くはありません。甘いお酒に慣れているせいか、焼酎独特の香りが苦手なのだそうです。そういう方たちにも美味しく飲んでもらえるような焼酎を造りたいです。まだまだ未熟で今は難しいと思いますが、たくさん勉強をして自分が理想とする酒質の提案が出来るようになりたいです。そしていつか、新商品が出来て、友達から「美味しい!」という言葉を聞いたときに「ああ、自分頑張ってる!」と言える気がします。その日に向かってこれからも蔵人として精進して参ります!

―― また数年後、今とは違った成長した酒迎さんをインタビューさせてください。改めてこの度はどうもありがとうございました。

  • 酒迎 菜々子

    三和酒類株式会社 / SCM本部 製造課

    1999年、大分県中津市生まれ。
    中津東高校を卒業して三和酒類へ入社。
    製品課で瓶詰め工程を担当後、製造課に異動。
    「蔵人」目指して勉強中。